大きな吹き抜けのあるリビングは、光を取り込みやすく、上下方向への開放感を生み出せるのが魅力です。
その一方で、「2階の床をなくして地震に弱くならないの?」「吹き抜けがある家でも耐震等級3は取れる?」と不安になる方もいるでしょう。
吹き抜けでは、本来なら2階床がある部分を設けないため、地震や風によって建物へ加わる力を、床や壁などへどのように伝えるかを考える必要があります。
さらに、大きな窓と吹き抜けを組み合わせたり、柱の少ないLDKにしたりすると、耐力壁を配置できる場所も限られてきます。
だからといって、「吹き抜けのある家=耐震性が低い家」と決まるわけではありません。
重要なのは、
といった点です。
国土交通省の日本住宅性能表示基準では、耐震等級3は、極めて稀に発生する地震による力の1.5倍の力に対して倒壊・崩壊等しない程度と位置づけられています。耐震等級2は1.25倍、等級1は基準となる地震力に対する水準です。
本記事では、吹き抜けと耐震性の関係から、水平構面、耐力壁、耐震等級3、構造計算まで、吹き抜けのある家を検討するときに知っておきたいポイントを解説します。
住宅の耐震性は、吹き抜けの有無だけで決まるものではありません。
地震が起きたとき、住宅では柱や壁だけが地震力を受けているわけではなく、床、屋根、梁、基礎などを含む構造全体で力を受け、地面へ伝えています。
そのため、吹き抜けがある住宅でも、吹き抜けによって床がなくなる部分を考慮し、建物全体として必要な構造性能を確保できるよう設計することが重要です。
同じ「6畳の吹き抜け」でも、
によって構造条件は変わります。
吹き抜けの大きさだけを見て、「この程度なら安全」「この大きさだと危険」と一律に判断するのではなく、個別の間取りを含めて構造を確認する必要があります。
吹き抜けが耐震性と結びつけて語られる理由のひとつは、2階床の一部がなくなるためです。
住宅の床は、単に人が歩くためのものではありません。地震や風によって建物へ加わった横方向の力を、耐力壁などへ伝える役割も持っています。
吹き抜けを設けると、その床が一部なくなるため、力を伝える経路が変わります。
さらに、吹き抜けのあるリビングでは、
といった希望が重なることも少なくありません。
その結果、床だけでなく壁や柱も少ない大空間になり、構造設計の条件が厳しくなる場合があります。
つまり、問題なのは「吹き抜けそのもの」ではなく、床や壁を減らした影響を建物全体でどう補うかです。
水平構面とは、床や屋根など、建物の水平方向に広がる構造面のことです。
木造住宅では、地震や風によって建物へ横方向の力が加わったとき、床や屋根がその力を受け、耐力壁などへ伝える役割を担います。
そのため、床は生活するための面であると同時に、住宅の構造を支える重要な要素でもあります。
通常の2階建て住宅では、2階床が一定の範囲で連続しています。
吹き抜けを設けると、その一部が開口となり、床が連続しない部分が生じます。
そのため、
などを含め、地震力をどのような経路で伝えるのかを考える必要があります。
吹き抜けを設けたからといって直ちに耐震性が低下するわけではありませんが、床がある一般的な間取りと同じようには考えられないため、吹き抜けを含めた構造計画が重要になります。
階段まわりに小さく設ける吹き抜けと、LDKの大部分を2階まで開放する吹き抜けでは、建物構造への影響は同じではありません。
たとえば、
といった違いによって、必要な梁や壁の配置なども変わります。
「大きな吹き抜けだから危険」という意味ではなく、吹き抜けが大きく自由度の高い空間になるほど、構造設計との調整が重要になると考えるとよいでしょう。
耐力壁とは、地震や風などによって建物へ加わる水平方向の力に抵抗する役割を持つ壁です。
木造住宅の耐震性を考えるうえでは重要な構造要素ですが、単に耐力壁を多く設ければよいわけではありません。
建物全体に対してどの位置へ配置されているか、床や屋根から受けた力を適切に伝えられるかなど、バランスも重要です。
開放的なリビングを希望すると、吹き抜けだけでなく大開口を組み合わせることがあります。
たとえば、
といったプランです。
この場合、「本来なら壁を設けられる場所に大きな窓があり、2階床もなく、さらに柱も減らしたい」という条件が重なる可能性があります。
そこで、別の場所へ耐力壁を配置したり、梁・柱・フレームなどで構造を成立させたりする必要があります。
耐震性を考える際、「壁が多ければ安心」と単純に考えるのは避けたいところです。
建物の一方に強い壁が集中し、反対側に壁が少ないなど、配置に偏りがあると、地震時に建物がねじれるような動きをする可能性もあります。
そのため、
を一体として考えることが重要です。
耐震等級は、住宅性能表示制度において、地震に対する構造躯体の倒壊・崩壊等のしにくさなどを表す指標です。
| 耐震等級 | 構造躯体の倒壊等防止の考え方 |
|---|---|
| 等級1 | 極めて稀に発生する地震による基準となる力に対して、倒壊・崩壊等しない程度 |
| 等級2 | 等級1で想定する地震力の1.25倍の力に対して、倒壊・崩壊等しない程度 |
| 等級3 | 等級1で想定する地震力の1.5倍の力に対して、倒壊・崩壊等しない程度 |
新築住宅における耐震等級3は、住宅性能表示制度上の最高等級です。
吹き抜けを設けた住宅だから、耐震等級3を取得できないというルールはありません。
吹き抜け、大開口、壁配置などを含む建物全体が、耐震等級3に求められる基準を満たせるよう設計できるかどうかがポイントです。
ただし、
などによって構造設計の難易度は変わります。
「吹き抜けでも耐震等級3にできますか」と確認するだけでなく、希望する間取りを見せたうえで、どのような構造計画になるのか説明してもらいましょう。
住宅会社のサイトやカタログでは、「耐震等級3」のほかに、「耐震等級3相当」「耐震等級3レベル」といった表現を見ることがあります。
これらの表現だけから、第三者による住宅性能評価を取得しているかどうかまでは判断できません。
住宅性能表示制度では、登録住宅性能評価機関による評価を経て住宅性能評価書が交付される仕組みがあります。
住宅会社へは、
まで確認しましょう。
耐震等級は、国の住宅性能表示制度において「構造の安定に関すること」を評価する項目のひとつです。
特に耐震等級3は、等級1より大きな地震力を想定した最高等級であるため、住宅の耐震性能を比較するときの重要な判断材料になります。
一方、耐震等級3だからといって、「どのような地震でも絶対に壊れない」「繰り返し大地震を受けても必ず無傷」と保証するものではありません。
実際の建物が受ける影響は、
などによって異なります。
耐震等級3を重要な指標として確認しながら、それだけで住宅の安全性すべてを保証する数字とは考えないことが大切です。
吹き抜けのある家では、耐震等級だけでなく、構造の安全性をどのように確認しているかも見ておきたいポイントです。
住宅会社へは、
を聞いてみましょう。
構造計算では、地震や風、建物自体の重さなどによって構造部分へ加わる力を踏まえ、安全性を確認します。
対象になるのは、柱や梁だけではありません。
など、建物全体を構成する部材が関係します。
許容応力度計算では、建物へ加わる荷重や地震・風による力などを踏まえ、それぞれの構造部材に生じる力が、部材に認められる許容範囲に収まるかなどを確認します。
建築基準法の構造計算では、木材について圧縮・引張り・曲げ・せん断などに対する許容応力度が定められています。
吹き抜けや大開口を取り入れ、一般的な間取りよりも壁や床が少ない住宅では、構造全体をどのように成立させているのか確認する材料になります。
住宅会社へ耐震性能について質問するときは、「耐震等級はいくつですか」だけで終わらせず、次のように聞いてみましょう。
「耐震性が高い」という結果だけでなく、その根拠まで確認することが大切です。
リビングに大きな窓を設け、その上部を吹き抜けにすると、開放感のある空間をつくれます。
一方、構造面では、
という条件が同時に発生します。
そのため、大きな梁を設けたり、強度の高いフレームを使ったり、別の位置へ耐力要素を配置したりと、意匠設計と構造設計を調整しながら間取りをつくることが重要です。
吹き抜けや大開口を成立させる方法はひとつではありません。
たとえば、
など、住宅会社や構法によって異なる方法があります。
「吹き抜けをつくるなら必ずSE構法」「鉄骨でなければ大空間にできない」というわけではありません。
実現したい空間に対して、住宅会社がどのような構造で安全性を確保しているかを比較しましょう。
神戸を拠点とするWHALE HOUSEでは、耐震構法としてSE構法を標準採用しています。
公式サイトでは、SE構法について全棟で許容応力度計算を行うと説明しており、大きな開口や高い天井を支えられる構造を活用した吹き抜けの設計例も紹介しています。
また、公式サイトでは最大5.5mの天井高を持つ吹き抜けの例も示されています。
SE構法を採用しているから自動的にどのような間取りでも安全になる、という意味ではありません。
WHALE HOUSEは、吹き抜け・大開口を含む一棟ごとのプランを構造計算によって確認する企業例として比較すると分かりやすいでしょう。
階段上部などを利用した比較的小さな吹き抜けは、リビング全体を大きく吹き抜けにする場合と比べて、床のない範囲を小さくできます。
2階の床面積も確保しやすく、限られた面積で開放感や採光を取り入れたい場合に検討しやすい方法です。
ただし、小さな吹き抜けなら構造検討が不要という意味ではありません。
吹き抜けの位置と床、梁、周囲の壁の関係を確認する必要があります。
リビングやダイニングの一部を2階まで吹き抜けにする、一般的な吹き抜けリビングです。
高窓やリビング階段と組み合わせることで、開放感と家族のつながりを生み出せます。
構造面では、吹き抜け周辺の床や耐力壁、梁の位置を調整する必要があります。
梁を室内へ現す設計にするなど、構造部材をインテリアの一部として活かす方法もあります。
LDKの大部分を吹き抜けにすると、非常に開放感のある住まいになります。
一方で、床がない範囲も大きくなり、大開口や柱の少ない空間を同時に希望すると、構造設計との調整項目が増えます。
このような場合は、
などを、初期設計から検討することが重要です。
「まず理想の間取りを完成させ、最後に構造を確認する」という進め方では、構造検討後に大きな変更が必要になる可能性があります。
たとえば、
といった調整が必要になることも考えられます。
開放的な家を希望するほど、意匠設計と構造設計を初期段階から並行して進めることが重要です。
吹き抜け単独なら構造的に成立する、大開口単独でも成立する、という場合でも、両方を同じ場所へ組み合わせることで条件が変わる可能性があります。
「吹き抜けはここ」「窓はここ」と個別に決めるのではなく、LDK全体をひとつの構造として考えましょう。
耐震等級3は重要な判断材料ですが、住宅会社を比較する際は、
まで見ることが大切です。
将来、子ども部屋を増やすために吹き抜けへ床を追加したり、反対に壁を撤去して大きな開口へ変更したりしたいと考えることもあるでしょう。
しかし、床、壁、柱、梁などは建物の構造に関係している場合があります。
構造部材を変更すれば、地震力の伝わり方や耐力壁のバランスなどにも影響する可能性があります。
将来的な変更を想定している場合は、新築時に「どこまで変更できる構造なのか」を相談しておきましょう。
神戸には六甲山麓をはじめ、高低差や傾斜のある土地があります。
こうした土地で吹き抜け住宅を建てる場合、建物そのものの耐震性能だけでなく、
も合わせて確認することが重要です。
耐震等級は住宅の構造躯体についての評価であり、「耐震等級3だから敷地や擁壁を含めてすべて安全」と考えるものではありません。耐震等級の評価対象は住宅性能表示制度に定められた構造躯体の倒壊等防止などです。
住宅密集地では、1階へ光を取り込むために吹き抜けを設けたり、限られた敷地を活用するために3階建てやビルトインガレージを計画したりすることがあります。
吹き抜け、大開口、ビルトインガレージなどの希望が重なると、壁や床を配置できる場所が限定される場合があります。
土地を購入して間取りを決めた後に構造上の制約が分かるのではなく、土地条件と希望する空間を早い段階から住宅会社へ共有しましょう。
海側や高台で大開口を計画する場合は、地震への備えだけでなく、風に対する構造安全性も確認したいところです。
構造計画では地震力だけでなく風圧力なども考慮されます。建築基準法関係でも、建築物の構造安全性を確認するための構造計算基準が定められています。
大きな窓を設ける場合は、建物構造に加えてサッシや外装材などについても、その土地の条件に合っているか確認しましょう。
吹き抜けと耐震性を両立する方法は、住宅会社によって異なります。
木造ラーメン構造と許容応力度計算を用いる会社、大手独自の高強度フレームを用いる会社、大断面の柱・梁を使う会社など、構造へのアプローチはさまざまです。
ここでは、神戸で注文住宅を検討するときに比較候補となる3社を、吹き抜け・大空間を支える構造方式の違いから紹介します。
掲載順は耐震性能の優劣を示すものではありません。
WHALE HOUSEは、神戸市を拠点に注文住宅を手がける住宅会社です。
耐震構法としてSE構法を標準採用し、公式サイトでは全棟で許容応力度計算を行うと説明しています。構造用集成材などを用いた木造ラーメン構造により、大きな開口や高い天井を持つ空間を計画しています。
公式サイトには最大5.5mの天井高を持つ吹き抜けの例も掲載されています。
そのため、
という方にとって、比較候補となる企業のひとつです。
SE構法だから自動的に希望するすべての間取りが実現できるという意味ではありません。希望する吹き抜け・大開口を含めた個別プランで、どのような構造計算を行うのか確認しましょう。
参照元:WHALE HOUSE公式HP「SE構法」
https://www.whalehouse.co.jp/performance/resistance/
積水ハウスは、鉄骨・木造の戸建住宅を展開する大手ハウスメーカーです。
公式サイトでは、構造自体の耐震性能について実物大の耐震実験などを実施していることを説明しています。軽量鉄骨住宅では、高強度梁「ダイナミックビーム」によって最大スパン7.0mの柱や間仕切りのない空間を可能としています。
また、2026年4月に発表した「ファミリー スイート」では、吹き抜け空間と上下に設けた大開口を組み合わせた立体的な大空間を提案しています。
そのため、
という方にとって、比較候補となる会社です。
採用できる構法やスパン、吹き抜けの規模は商品・プランによって異なるため、希望する間取りでの対応可否を個別に確認しましょう。
参照元:積水ハウス公式HP「耐震性能」「ファミリー スイート」
https://www.sekisuihouse.co.jp/kodate/spec/technology/earthquake-resistance/
https://www.sekisuihouse.co.jp/kodate/start/familysuite/
住友林業では、独自のBF(ビッグフレーム)構法を採用しています。
BF構法では、一般的な105mm角の柱約5本分に相当する560mm幅の大断面集成柱「ビッグコラム」と梁を金物で強固に接合するラーメン構造を採用し、耐震性を確保しながら大空間・大開口を実現できると公式に説明しています。
また、2025年にはBF構法の発売20周年を発表し、耐震性と設計自由度を両立する構法として、壁の少ない大空間を設計しやすいことを紹介しています。
そのため、
という方にとって候補となります。
参照元:住友林業公式HP「住宅事業における製品の安全・品質管理」
https://sfc.jp/information/sustainability/social/product-quality/product-quality.html
| 住宅会社 | 吹き抜け・大空間を支える主な考え方 | 検討しやすい人 |
|---|---|---|
| WHALE HOUSE | SE構法と全棟の許容応力度計算によって、吹き抜け・大開口を一棟ごと構造設計 | 木造で自由度の高い吹き抜けと構造性能を両立したい人 |
| 積水ハウス | 独自の高強度梁・フレームなどによって、大空間・大開口と構造性能を両立 | 大手独自の構造技術で吹き抜けを検討したい人 |
| 住友林業 | 大断面集成柱を用いるビッグフレーム構法で木造の大空間・大開口を実現 | 木質感と大空間、構造性能を両立したい人 |
対応できる吹き抜けの大きさ、耐震等級、構造計算方法、商品仕様などは、土地条件やプランによって異なります。実際に希望する間取りでの対応可否は各住宅会社へ確認してください。
まず、希望する吹き抜けを含むプランで、どの耐震等級を目指すのか確認しましょう。
と質問してみましょう。
吹き抜けや大開口のある住宅では、どのような構造計算を行っているのか確認することも重要です。
など、具体的に聞きましょう。
大きな吹き抜けを希望する場合は、デザインを決めた後で構造を合わせるよりも、初期段階から意匠と構造を調整する方が、希望する空間と構造性能を両立しやすくなります。
住宅会社へ、
を聞いてみましょう。
設計上十分な耐震性能があっても、その構造を現場で適切に施工する必要があります。
確認したいのは、
などです。
住宅会社の吹き抜け施工事例を見る際は、写真の開放感だけでなく構造にも注目しましょう。
まで確認すると、住宅会社ごとの設計力の違いが見えやすくなります。
吹き抜けがあるだけで、住宅の耐震性が低いと決まるわけではありません。
一方で、吹き抜けでは2階床の一部がなくなるため、床を通じて地震力を伝える水平構面への影響を考える必要があります。
大開口や柱の少ないLDKを組み合わせる場合は、耐力壁を配置できる場所も限られるため、構造設計との調整はさらに重要になります。
吹き抜けのある住宅でも耐震等級3を目指すことはできますが、耐震等級3という数字だけを見て判断するのではなく、
まで確認しましょう。
WHALE HOUSEのようにSE構法と全棟の許容応力度計算によって吹き抜け・大開口を個別設計する会社、積水ハウスのように独自の高強度構造で大空間を成立させる会社、住友林業のように大断面の柱と梁によるビッグフレーム構法を用いる会社など、開放的な空間を支える方法は異なります。
吹き抜けと耐震性を両立するために大切なのは、理想の間取りを決めてから構造を合わせるのではなく、設計の初期段階からデザインと構造を一緒に考えることです。
写真で見える開放感だけでなく、その空間を長く支える構造まで納得できる住宅会社を選びましょう。



※1.参照元:オリコン公式HP「【2024年】近畿で満足度が高いハウスメーカーランキング|口コミ比較|オリコン顧客満足度」
https://life.oricon.co.jp/rank-house-maker/area/kinki.html
※2.参照元:住友林業公式HP「住友林業が選ばれた理由」
https://sfc.jp/ie/feature/